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榛斗は橘をまだ恐れていた。
たとえ携帯に共同戦線を組むって書いてあっても、未来が変わることがあるわけだから。
それに既に一度変わっている。
「どうして、橘さんは僕の名前を書いて、送ったの?」
もし答えが推理って返ってきたら、驚いていただろう、いやそうに違いない。
しかし、榛斗は驚いていた。
単に運という馬鹿げた回答でもなく、まして推理という論理的な方法で導き出された結果でもない。
とても予想外な返事であった。
しかし、筋は通っている。
「私が月野くんのことが好きだから」
この返事から分かることは、橘が榛斗のことが好きってこと。
つまり告白と捉えるのが普通だ。
しかし、これを全体的に見ると、橘は好きな榛斗が今何をしているのか、知りたかった。
だからメールを送り、そして返ってきた。
その結果、橘は榛斗のプライバシーを知ることができた。
行き過ぎた愛情はときよりストーカーのように感じる。
この件もそうだ。
少し不快に感じた榛斗だが、にっこりと微笑み返す。
この微笑みを橘がどう感じたのか、分からないが、話を続ける。
「私と共同戦線を組んで欲しいの。
私は運動神経がとても良いけど、頭の回転が悪いから1人でやっていける自信がないの。
だから月野くんが組んでくれれば、司令塔を月野くんがして、兵士が私、というお互いの弱点を補う作戦。
それに私の願いは月野くんの願いだから、最後に2人になったら、私の携帯を壊して、月野くんが優勝してね」
榛斗は運動がそれほど得意ってわけではないため、互いに損にはならないと思い承諾した。
しかし榛斗は1つ言いたいことがあった。
それは
「俺は頭の回転が早いわけではない」
と。
口には出さなかったが。
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