8人が本棚に入れています
本棚に追加
橘と榛斗は教室に戻った。
教室に入ると同時にクラスの何人かがこちらを見る。
そしてすぐにそれぞれがしていたことに戻る。
しかし、1人だけ違った。
そしてこちらに近づいてくる。
榛斗とそいつとの距離は約4m、そして周りには誰もいない。
いや、後ろには橘がいるが後ろはあまり関係ない。
榛斗は後ろポケットから殺虫スプレーを取り出し、噴射する。
「うわっ、何しやがる」
時間は08:29、あっ今08:30になった。
「今のことをチャラにしてやるから、宿題見せてくれ」
「偶には自分でしてこいよ。藤原くん」
ため息混じりに返事をする。
「そういうこと言うなら、とりあえず先にスプレーをかけてきたことを謝れ」
「ごめん。謝ったから宿題は見せなくて良いよね」
「確かにそれに近いことは言ったが、頼む!宿題は見せてくれ。いや見してください。」
「分かったよ、次はちゃんとしてこいよ。藤原くん」
「ありがとう。恩に着る」
こういうのはよくあることだ。
いつも嫌々という態度を取るが、最終的には宿題を見せてやったりする。
榛斗はそういう人間なのである。
「それともう友達になって半年は過ぎてるんだし、ケンジって名前で呼べよ」
「宿題を自分でしてきたらね」
宿題のプリントを藤原に渡した榛斗はすぐに教室を立つ。
友達かと小さく呟きながら。
そんな会話をしている間にも橘は自分の席で携帯で何かを打っている。
クラス全員の名前をカナタに送っているのだ。
6組には参加者は橘と榛斗だけであった。
榛斗は職員室に向かった。
現在、御汐高校に通っている全生徒と先生の名簿を知るためだ。
職員室に入ると担任がすぐ目に入り、頼み込んだ。
「理由は?」
と聞かれたが、
「将来、教師などの職業に就き、人の名前を覚えないといけない時、名前が覚えられなくて相手を不愉快にしないため、今から人の名前を覚えられる記憶力を身につけたいんです」
と言うと難なく全生徒と先生の名前が書かれた名簿帳をコピーしてくれた。
そして走って教室に戻り、橘にコピーを渡した榛斗は、それ以降学生らしい行動をとっていた。
最初のコメントを投稿しよう!