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ついていくとそこは、体育館裏だった。
ここは普段学校が終わってからしか人は来ない。
誰かに助けを求めようとしても、誰も来ない。
元から助けを求める気は無いのだけど。
それに、助けを求めたかったら、体育館の中にいる間にそうしている。
さらに言うなら助けを求めなくても、一人は必ず来る。
榛斗と戦線を組んだ橘が。
来るまで時間を稼ぎ、挟み撃ちにしたら簡単に倒せる想定だ。
時間稼ぎは一人でしないといけないのだけれども。
神山が榛斗に話しかける。
「お前、参加者だろ。携帯さえ渡せば痛い目を見ることはないぞ」
参加者かどうかを確認してきたということは、神山の携帯では榛斗が参加者ということまでは分からないらしい。
榛斗の携帯でも参加者かどうかは書かれていない。
橘の能力があったからこそ参加者の名前を知ることができた。
他の参加者も榛斗達が参加者だと気づいてないかもしれない。
今は他の参加者なんかどうでもいい。
神山に集中しなくてはならない。
「携帯は渡さない。たとえ痛い目にあおうが関係ない」
こんなのはただの虚勢でしかない。
本心はかなり恐怖しているし、逃げ出したいと思っている。
「威勢だけは良いな、だが携帯を渡さないとなると実力行使しかねぇな。ゴラ-ッ」
神山は榛斗に向かって走り出す。
榛斗は殺虫スプレーを取り出し噴射する。
神山は噴射されるより早く、息を止め、目を極限まで細めた。
そしてその勢いのまま突進してくる。
振りかざされた拳はそのまま一直線に榛斗に伸びる。
榛斗は攻撃をよけるが、よけた先に追撃が来る。
追撃が腹に的中し、榛斗はその場に膝をつけ、手をつき、四つん這いの姿で咳き込んだ。
立ち上がる暇もなく、蹴り飛ばされる。
蹴り飛ばされた勢いでクルクルと地面を転がる榛斗。
榛斗が立ち上がれない間に神山は携帯に目を向けていた。
しかし直ぐに携帯を閉じ、榛斗に追撃をくらわす。
まるでいじめっ子といじめられっ子の関係のようだ。
漫画ではよく、主人公がいじめられっ子だった場合、ヒロインが助けてくれる。
「月野くんから離れて!」
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