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橘が来たのだ。 橘の手には自由箒が握られていた。 一薙ぎ、二薙ぎと自由箒を振り回し神山を榛斗から離した。 距離をとった神山は携帯を取り出しメールを確認する。 その後携帯をポケットにしまい、ニヤリと笑い、橘の右側に走り、真横に着いたとき、90°角度を変え、そのままの勢いで襲いかかる。 橘は横に回られようが関係なく神山のほうに体を向け、いつでも攻撃に備えられるようにしていた。 そして神山が自由箒の射程圏内に入った途端突きをした。 神山は突きが来るのを知っていたかのように、橘が腕を引いたと同時に左右に体を動かせられるように体を低くした。 突きの来る方向が右寄りの中だと分かり左側によけた。 橘の突きは虚しく宙を裂き、その後橘に大きな衝撃が走った。 神山がカウンターで橘の腹部を殴ったのだ。 そのまま連続で攻撃したい神山だったが足が上がらなかった。 何かが捕まっていた。 何かとは誰でもない榛斗である。 この間に橘は腹部の強打によっての生理現象が生み出す嘔吐感を味わっていた。 この嘔吐感は直ぐに引き、榛斗が稼いでくれた時間を役に立てることができた。 この時間、実際に10秒ほどの間に榛斗は神山から蹴られ続け、顔が腫れ、口は切れていた。 榛斗は自分にはこれくらいしか出来ないと知っていたし、これが最適な行動だと分かっていた。 この戦いの前に考えていたことがある。 それは榛斗が橘のサポートをし、橘が相手を倒すということである。 元からそういう契約で戦線を組んでいたが、榛斗にも男のプライドがある。 プライドから出た妥協点がサポートをすることであった。 今回、榛斗が想定していなかったことは自分がここまで痛めつけられることだけだっただろう。 そして榛斗が稼いだ時間のおかげで橘が立ち上がった。
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