30人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
やっちまった…!
坂上専務の秘書、香凛にとってミスは日常茶飯事。
容姿にはそこそこ自信あり。
まわりもそう言ってくれる。
大学もそれなりに一流と言われるところを首席で卒業した。
だからこそ、のこの大企業の今のポストがある。
しかし、香凛の決定的な欠点…
抜けているのだ…
毎日の様になにかやらかす。
いつも、回りにお笑いネタを提供するはめになる。
いや、笑われて済まされるものはいい。
今日の、は致命的だった…
「森山さん、坂上専務に面会の方が見えています」
受付から内線を貰った時、まさに香凛はその坂上専務と遅い昼食に出ようとしていた。
「面会?聞いてないが…」
渋いナイスミドルの坂上専務はちょっと日本人離れした端正な顔で香凛に確認する。
尋ねられた香凛はそれどころではない。
内線の内容を聞いた瞬間からシステム手帳と格闘中…
あった!
確かに、一昨日取引相手の企業の小野部長から今日14時に次のプロジェクトの支援者との面会が急遽入っていた…
つまり…どこをどうしたのか…伝え忘れていた…
「すみません!専務!」
平謝りの香凛
「まぁ、外出前で良かった。お迎えにあがりなさい。私の部屋へ」
さして怒っている風もなく、専務は自室に戻った。
それから小柄な香凛はまさしく転がる様に受付を目指す。
「お、お待たせしましたっ!」
受付に着いた時は汗だく、しどろもどろ、息切れ、三拍子揃っていた。
「あなたは坂上専務の秘書ですか?」
二つ折りになるくらい頭を下げている香凛を見下ろした訪問者は可笑しそうに笑った。
「私との予定、忘れていたでしょう?」
恐る恐る頭を上げる。
「まぁ、無理もありません。小野が連絡をいれたのが一昨日の終業間際だったんでしょ?」
よく透るバリトンボイスに、小柄な香凛とは言え二階から見下ろされている程の威圧感を覚える長身。
恐縮しながら頭をあげる。
そこに立っていたのは…
2メートル近い長身に銀色に輝く髪。
森の中の沼を思わせるような碧眼。
色白で恐ろしく鼻筋のとおった美青年だった。
おそらくは欧州の血が混じった大半の女性なら見とれるような美貌だった。
最初のコメントを投稿しよう!