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海の音がする…
ぼんやりと少し痛む頭に意識が戻ってくる。
うそっ?!
ガバッ、と音がする位あわてて香凛は起き上がった。
手触りのいい皮のシートではなく、同じ色のふんわりとしたベッドの上に寝かされていた。
首筋がちょっとヒリヒリする。
手をやると少しだけ血がついてきた。
気を失った時にどこかで切ったんだ…
はぁ、と香凛はため息をついた。
だからアルコールは無理!って言ったのに!
次第に銀髪碧眼に怒りが込み上げてくる。
ちゃんと気絶する、って言ったのに!
パワハラだ!
それにしても…
ここはどこだろう?
広い窓は開け放たれていて綺麗なレースの白いカーテンが風を含んでふんわりとウェディングドレスの様に広がっている。
窓の外は拓けていて少し遠くに砂浜が見えた。
西陽が広い部屋を赤く染めている。
どこなんだろう…?
「目が覚めましたか?」
カチャ、と言う音がしてにっこり極上笑顔の銀髪碧眼が入って来た。
「本当に気絶するとは…」
可笑しそうにわらう。
香凛はイライラしてきた。
「アルコールは合わない、っていったじゃないですか!」
少し頬を膨らませ抗議する香凛を愛しそうに銀髪碧眼が見る。
「紅扇さまの秘書はつとまりません!会社にはもっと優秀でお酒に強い秘書がたくさんいますから変えて下さい!」
一気に捲し立てると香凛は帰ろうと立ち上がった。
「ノン、ノン。流架です」
事も無げに銀髪碧眼が笑う。
「それに…もう無理です」
「は?」
何が?と言う様に強がった顔で香凛が銀髪碧眼を睨む。
「おお、怖い」
ふざけた口調の銀髪碧眼に腹が立つ。
「こ、こ、」
銀髪碧眼が首を指す。
さっき触ったら血がついていたあたりだった。
「もう私、香凛の血、吸っちゃいましたもん」
またいたずらっ子の様に微笑むと銀髪碧眼はちらっと赤い舌なめずりをした。
「ひっ?!」
香凛はもう一度首筋に手をやってみる。
そんな大きな傷ではないがふたつ並んだ傷口に滲んだ血…
「き、き、吸血鬼?」
ベッドの上で後退りしながら銀髪碧眼と少しでも距離をとろうとする。
「ヴァンパイア、って言って下さい」
にこっ、とわらって銀髪碧眼がにじりよってきた。
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