第2章

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「そんな…そんなの、信じられるわけないでしょ?」 枕で身を庇いながら香凛はベッドボードまで後退りしていた。 可笑しそうにわらいながら銀髪碧眼はじりじりと追い詰める。 「悪い冗談はやめて下さい!紅扇さま!」 銀髪碧眼を遠ざけようと、顔の前でぶんぶん振る香凛の両手をがっしりと掴むと銀髪碧眼はまたにっこりわらって 「流架、ですよ、るか」 と、香凛の唇に指をあてた。 「る、か…」 「そう、流架。私の名前です。流架、って呼びなさい」 まるで氷の様に冷たい手で、でもやさしく香凛の頬を撫でた。 不思議なことに頬に触れられると落ち着きが戻ってくる。 「る、流架は…き…あ、ヴァンパイアなの…?」 お願いだから冗談だと言って! 「そうですよ。ヴァンパイア一族の次期当主です」 そんな… 子供の頃見た吸血鬼映画のシーンが甦る。 もしかして…それって…まさか?! 「じゃ、わたし血を吸われちゃったから流架と同じヴァンパイアになっちゃうの…?」 そんなことって!?冗談でしょ?! 流架がにっこりとわらった。 「いえ、あなたが望まなければヴァンパイアにはなりません」 良かった! ほっ、とした香凛はへなへなと力が抜けた。 「私はヴァンパイアですが人間と同じ様に生活できます。食事も人間と同じ様にとることができます。でも…」 「でも…?」 「毎日ではありませんが、どうしても生きていく為には血が必要なんです」 それで、わたし? 「なんでわたしなの?」 もっともな事を聞いてみる。 「血を吸うだけならいくらでもいるじゃない?!」 「私は愛している人の血しか吸いません」 「はぁ?」 「男性は論外ですが…私達一族は愛している女性の血しか吸えません」 他のヴァンパイアの家系は知りませんが…と 「なんで…今日初めて会ったわたし?なんでわたしなの?」 「一目会った時に恋しました」 悪魔に魅いられた… 「わたし、わたしは半年後に結婚するの!」 入社した時から憧れだった反町先輩… なみいるライバルの中から自分を選んでくれて、プロポーズまでしてくれた大事な人。 「知ってますよ。坂上専務が言ってましたね」 「だから…わたしじゃ無理…。わたしじゃ役不足…」 くすっ、と流架がわらった。 「また、間違えましたね。日本語の使い方…」
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