木犀の 甘き黄金の 奏でし香

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<季題> 木犀 <季節> 秋 木犀: ここでは一般的な金木犀を指す。字義通りの銀木犀や亜種の薄黄木犀を指しても好い。また樹木自体を想起しても好いが、特に香り芳しい花の開く時節を念頭にされたし。 の: 格助詞。属格。 甘(し): 味覚刺激の一。最も喜ばしく善なる刺激として感知されることがしばしば。転じて、「喜」と「善」の象徴。 黄金: こがね。 必ずしも金木犀を示唆せず、単純にきらびやかな黄色系視覚刺激として好い。転じて、「輝」と「貴」の象徴。 の: 格助詞。主格。「が」に置き換えて読解すべし。 奏で: 「奏づ(かなづ)」の連用形。「演奏する」の意。 奏でられたのが「音」即ち聴覚刺激でなく「香」であったことから、聴香を想起せよ。 し: 助動詞「き」の連体形、体験・伝聞過去。 ここでは体験・伝聞の如何は不問だが、「過去(の香)」であることに留意。ただし、過去の追想を前提とした上で現在の体験があるか、現在の体験を伴わぬ過去の追想のみがあるかは、これもまた不問とする。 香: か。「かほり」は字余となるため回避。 この句では、比喩による展開のない単純な嗅覚刺激を指すとして好い。余談だが、嗅覚刺激は味覚刺激に並んで長期記憶され易く、幼少期の記憶も保持していることが多い。意識では忘却されていても刺激を受けると記憶が再現する。化学的刺激の不思議か。
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