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「ありがとう、ございました」
勢いよく水を飲んだせいか、はぁはぁと息をしながらお礼を言ってきた男性に笑いかけ、いいんですよと言いながらキャップを渡す。
「あの、念のため病院に行った方がいいですよ?じゃあ僕はこれで」
そう言って立ち去ろうと腰を上げた僕は立ち上がりきれずに尻餅をついた。
「いてっ」
引っ張られた感覚に裾を見ると、男性が僕のTシャツの裾を掴んで縋るような目を向けている。
「えっ……あ、あの何でしょうか?」
大の大人なのに、可愛い要素はなさそうなのに、その縋り付くような態度が小動物のように可愛く見えて、僕はその場に留まって彼の顔を凝視する。
「図々しいお願いなんですが、私の家、すぐ近くなんです。よければそこまで送って行ってくれませんか?
まだちょっとフラフラするんです」
あぁそういうことか。そうだよね、僕は具合の悪い人をほったらかしてなんて酷い人間なんだ。
「いいですよ。じゃあ行きましょうか」
彼の腕を掴んで立たせた僕は、また支えるように彼の誘導に従い自宅まで送ることにした。
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