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「一宮君。その子は誰?ここは役員以外立ち入り禁止だ」
「うるせぇ。俺の勝手だ」
帯の色から上の学年の奴に対して、偉そうな態度を取る。見た事あるが役員を一々覚える気もなかった俺はどの役職の奴か覚えてなかった。
ただ、ここの変なランキングに入っていそうな容姿はしている。
けれど、格好よさで言えば一宮龍のが、綺麗さで言えば秀さんが、可愛さで言えば真百合が、群を抜いているからどうってことない顔にしか見えない。
と言うか、兄貴を思い出される雰囲気を持った役員に反吐が出そうだ。
「浩介、そこに座れ。何食う」
「食欲ねぇよ」
「遠慮すんな。奢りに決まってるだろ」
一緒に食いたくないだけだ。
それに金には困ってない。
俺の生活は秀さんの金で賄われている。使いたくはないが最低限は使わせてもらう。自分以外を頼らせたくないと言う思いで、金銭管理を秀さんは行っているんだろう。
と言っても、電話とか会いに来るとかは約束通りないけれど。
「まぁいいや。これとこれ。こいつにも同じもん出してくれ」
「かしこまりました」
ウェイター付きってのも有名な話だが、ここはレストランか。
「お前、友達いなくなったんだって?」
「友情なんて芽生えてねぇ友人は、アンタのせいで離れて行ったけど?」
「へぇ、言うな」
「金と容姿にしか興味の無い奴しか居ねぇこんな所で、真面な奴居ると思ってねぇし。卒業さえできればいい」
そうすれば、俺は自由になれる。
「ふははははっ。金と容姿、間違ってねぇな」
「うるせぇ」
「中身も分かってねぇで完璧とか、笑える」
なんだ、こいつ。
途端に、雰囲気が変わる。何かを思い出しているかのように、先程までの傲慢さが無い。
妬み、恨み、嫌悪、憎悪、諦め?
分からねぇ。
俺のに似ているようで似てない。
なんかこいつのはギラギラしている感じがする。
なんだ。
「やっぱお前変わってるわ」
「は?」
考え過ぎだ。
こいつは馬鹿だ。
「そんな事より、着いて来てやったんだ。約束守れよ」
「約束?したっけか?」
「は!?ふざけ――」
「お待たせいたしました」
バンッとテーブルを叩いて立ち上がれば、丁度ウェイターが食事を持ってくる。
「来たぞ。座れよ。一緒に食うんだろ?浩介」
「…チッ」
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