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「お前…この間言ってたこと本気か?」
『え?この間?私なにか言いました?』
「覚えてねぇのか?言ってただろお前。女中を辞めて隊士になりたいだなんだと戯言を」
『…あぁっ思い出した!!言いましたね!!そういえば!!たしかに!!』
「……お前忘れてたろ?」
『いやだなぁ覚えてますよ。いま丁度お腹の辺りくらいまで思い出してますし。ね?』
「それほとんど思い出せてねーじゃねぇか。つーかお前マジか。お前のせいであれから俺がどんだけ悩んだと思って…」
深い溜め息をついた土方さんが私の淹れたお茶を啜る。
「…まぁ忘れてるぐらいだ。てめーもたいして本気でもねぇってこ、」
『覚えてますよ。私、隊士になりたいです』
「…嘘つけ。忘れてやがったくせに」
『急にその話しされてもわかりませんよ。こっちは別の用件だと思って来てたんですから』
「別の用件?お前何だと思ってたんだ?」
『いやそれはアレですよ。まだこんな早い時間には話せないようなアレですよアレ』
「どれだそれ」
てっきり今朝のマヨネーズ(賞味期限切れ)の話かと思ってたのに違ったみたいだ。
危ない危ない。ここ1ヶ月程ずっとこの人に出してたマヨネーズが全て賞味期限切れだったことがバレたかと思ってヒヤヒヤしたよまったく。
「何が不満だ?」
相変わらず目付きの悪い瞳で土方さんはギロリと私を睨む。
「これまでのように此処で女中としていりゃ身の危険もねーし、てめーがもしも何処か行きてぇところがあると言うなら俺も奴らも可能な限り連れ出してやるっていつも言ってんだろ?別にてめーを籠の中の鳥のようにしてるわけでもあるめーし」
『はぁ…まぁそうですけど行きたいところは特に思い浮かばないんですが…』
「衣食住に困るこたぁねぇ。隊士たちもわんさかいやがるお陰で喋り相手に困ることもねぇ。…まぁ、ちょいとうるさすぎる気もするが今までだって楽しくやってきただろ。一体何が不満で隊士になりてぇなんざ戯言を言ってんだ?」
『何が不満というか…』
言えない。
こんなに真剣に私の話を聞こうとしてくれている土方さんに、私が隊士になりたい理由なんて言えない。
隊士の給料が女中の給料の倍だからだなんて絶対に言えない。
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