第5章

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 五千席ほどのホールのアリーナ部分の客席で「見学」している時に、そういったことに敏感なタカネの目くばせに、最近の気まずさも忘れてマリアは応えていた。 どこへ行っても、嫌な対バンはいるものだと…それを見たCUEは笑いをこらえるのに苦労している。 そこにやってきたシヴァもすぐにわかったらしく、ふふっ、とかすかに笑う。 最後にやってきたMIKUはフォローする義務にかられたらしく、やけに大きな声で、 「しかし…何だね、今からこんなに緊張して、本番はどうなっちゃうのかね? 」 彼の響く声ではあまりにしらじらしく聞こえ、他のメンバーはとうとう爆笑してしまった。 マリアは久し振りにバンドの中に自分の居場所を見つけていた。  ようやくROSEのリハーサルが終わり、麗華と合わせてみても、マリアはあまりうるさいことは言われなかった。 日頃多弁な麗華があまり何も言わないので、マリアは広いステージでギターを抱えたまま、呆然と立ち尽くしてしまった。 が、麗華はアナスタシアのボーカルにも同じように接しているので、少しは気を取り直した。 セッションバンドはリハーサルというものをやっていないので、この時が初めての音合わせだった。 マリアは初めてZENNのドラムでギターを弾いた。 無我夢中のうちにソロになるので、ステージの前の方に出る。 そしてそれが終われば、また麗華のところまで引っ込む。 それを数回こなすうちに、リハーサルは終わってしまった。
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