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そんな「成功」にいい気になっていたわけでもない。もっともっとのおねだりでもなかった。
マリアの方も次のツアーの準備、ギルティーズの準備と日程が詰まっていた。
ZENNの方もレイジー・スレイジーのアルバムのレコーディングに向けての準備に相当手こずっているらしく、疲れの色が濃いのだが、それでもマリアを求めてやまなかった。
「疲れている時こそ、おいしいものが食べたくなる、そうじゃないか、マリア? 」
軽く息をはずませながら、ZENNはマリアの横にあお向けになった。
マルボロに手を伸ばすのもおっくうそうだった…
マリアはゆっくりと体を起こすと、ZENNに覆い被さり、そっと唇を重ねていった。
彼は最初は面白がっていた。
が、マリアの唇がしだいにすべり下りていくと、あわて始めた。
「おい、マリア、何のつもりだ? マリア…」
マリアにもさしたる企みがあったわけではない。
しいて理由をあげるとすれば、ただ、ZENNのすべてが欲しくなっただけ。
それは、いつもは酷薄なくせに、ZENNの機嫌のいい時は少年同士の睦みあいのようになる関係に心ひかれ、いつまでも続けたくなってしまったということかもしれなかったし、ベッドの上で、あるいはドン・ペリを酌み交わしながら授けられる彼の教えを独り占めしたくなったということかもしれなかった。
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