第5章

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 堕天使のマリアがスタジオに登場すると、スタッフの間にはどよめきが起こった。 マリアは照れながら、決められた通り、すでにスタンバイしているZENNの左側に立って、彼の首に両腕を絡めた。 スタイリストがマリアの黒のペディキュアとZENNのプラム色のペディキュアが綺麗に見えるようドレスの裾を直している間、マリアは大きな瞳で誘惑するように、ZENNの瞳をのぞきこんだ。 「マリア、何やってるんだ。」 ZENNは吹き出したが、それは照れているのだということは明白だった。 撮影は始まったが、彼はなかなか動揺から立ち直れないようだった。 「ZENN君、どうしちゃったんだよ。」 カメラマンが困ったような声をあげる。  しかし、最終的には、天使は堕天使にかまわぬように正面を向いて微笑み、堕天使は妖しい瞳を同じ方向に向ける、というベストショットは何枚も決まり、深夜にまで及ぶ撮影は無事終了したのだった。
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