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いつの間にか、夏は行っていた。
そんな寂しさを、マリアは由真と、部屋のベッドの上でかみしめていた。
いつになく厳しかった残暑も去り、明日からはまたツアーという日の昼下がりだった。
母のセカンド・カーを借りて近場をドライブをする約束だったのだが、私服に珍しくメークの由真はどことなく大人びて色っぽく、さらに最近のZENNとの夜も後ろめたくてつい、抱き寄せていたのである。
「来年の夏は、二人でどっか行こうな。」
「う…ん…」
珍しく由真の返事はあいまいだった。
「どうしたの? 」
「うん…来年、私、何してるかなあって…」
初めてマリアは気づき、恥ずかしくなった。
「そっか…由真、三年か…高校最後の夏だったんだ…ごめんね…」
今日の約束だって、日頃の由真の献身に感謝する意味だけだった。
「ううん、いいの。でも、なんか、毎日今年で最後ってことにはこだわってるって感じ。だから、マリア嫌かなって思ったけど、メークしてきちゃった。」
「嫌じゃないよ。」
続きは素肌の由真を背中から抱き締めながら囁いた。似合うよ、すげえ可愛い、と。
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