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予定よりも遅くはなったが、二人は出かけた。
たかだか隣町のファミリー・レストランに寄るのに、助手席の由真は大はしゃぎだった。
確かにそれはこれまでの二人にはぜいたくだったが、経済的な目途がついてきたマリアにはそう痛い出費ではなくなりつつあった。
「ツアーが落ち着いたら、クルマ、買おうかと思ってる。中古の、安いのでいいから。」
由真も嬉しそうに微笑んでくれた。
お目当てのレストランでマリアが驚いたのは、男の客の由真への視線の多さだった。
結局は彼女の連れがマリアであることに納得する視線ではあるのだが、マリアは何だか複雑な気持ちだった。
それでも気を取り直したつもりだったのだが、不自然だったのか、自分が時間を気にしていると察してくれたのか、パフェまで食べおわると由真は、充分満足したからこのまま帰ろうと言ってくれた。マリアはその言葉に甘えたが、夕闇の駐車場の車の中で二人きりになれば、彼女にキスしていた。
「由真、あまり会えないけど、浮気なんかするなよ。もししたら…ただじゃおかない。」
その言葉に由真は素直に喜んでいた。
「するわけないでしょう。マリア以上の人なんていないもの。」
「…お前がそのつもりでも、俺の留守中は男には気をつけろよ。何かあったら、俺の部屋に隠れてもいいから。」
「…どうしたの? 」
イラ立ちながらもマリアは白状せずにはいられない。
「さっき、店の中で、みんなお前のこと見てたからさ…」
「気のせいよ。みんなマリアを見てたのよ。」
由真のとろけそうな表情にマリアは安心した。
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