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どうすりゃいいんだ?
「きょうこ、助けて……」
「えっと……い、いいんじゃない? けっこうお似合い……かも」
「そうやって茶化すし……」
「哲也君哲也君!」
オレから離れたれいなちゃんは、手を差し出してきた。
「はい!」
握手しろということらしい。
訳も分からず手を握る。
「れいな、嬉しい!」
「あー、そ、そう。そりゃよかった……ははは」
結局、なんだったんだ?
なんだかドタバタのうちに、お茶会は終了した。
昨日、確かに感じた一体感。
自分の居場所はここにあると感じた。
このかけがえのない絆が永遠に続いてくと、素直に信じることができたはずだった。でも……。もうすでにこのとき、4人の絆という歯車は、少しずつ狂い始めていたんだ……。
「早く早く!」
朝っぱらかられいなちゃんの秘密サークルに付き合わされるオレ。朝の7時に叩き起こされたら、そりゃあ付き合わざるを得ないよな。
「ほらね? 桜のつぼみだよ? もうすぐ咲きそうだね。春になりそうな秘密の予感だね!」
なんて天真爛漫。ホント、なごむ。でも……。どうしても、れいなちゃんの昨日の発言を意識してしまう。
「れいなも、哲也君のこと、大好きだもん!」
大好き、か……。
れいなちゃんはオレの手を握ったまま話そうとしない。 まあ、別に無理に話す必要なんてないんだけど。きっとれいなちゃんは、特に深い理由もなく手を繋いでるに過ぎないだろうから。
れいなちゃんは、オレと繋いだ手をブンブンと振り回しながら歩いていく。子どもみたいだけど、楽しそうだ。れいなちゃんが楽しんでるなら、それでいい。無粋なことはしないでおこう。
桜のつぼみは、確かに今にも咲き出しそうにぷっくりとふくらんでいた。それを、れいなちゃんと手を繋いで見上げる。れいなちゃんは目を輝かせている。春の訪れの気配を感じ取っているんだろうか。そんな些細なことで感動できるなんて、れいなちゃんはホントに純粋だなァ。
柔らかな風が吹いて。れいなちゃんの髪とリボンが揺れる。
穏やかな朝。こういうのもありだって思っている自分。
「れいなちゃんは、春が好きなんだ?」
「夏も秋も冬も好き! ぜ~んぶ好きなんだよ」
「そっか。好き嫌いはしないもんな」
「うん!」
また風が吹いて、オレの髪をあおる。風があるのは、春になった証拠だ。
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