第1章

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自分の気持ちは別に置いといて、これまで省吾とは昔とかわりなく接してきたつもりだ。 たしかにおざなりのようなキスをしといて、心を揺り動かされなかった事は無いとは言いきれないが、省吾が幸せになれるなら俺はそれもいいか…と思っていた。 でも現実は辛いことばかりで。 矢野が校長の知り合いの娘と見合いをしたという頃から、省吾がおかしくなってきた。 日に日に自棄を起こして荒れる省吾をいつも見守り、誰彼構わず寄っていく度に俺は宥めてきた。 正直、自分の感情を止めるのにも限界はきていて。 それでもまだ我慢の余地はあった。 さっきまでは。 矢野とのズルズルした関係が卒業後も続くかと思っていたから、もう関わるのは止めようと東京の大学を選んだのに───。 目の前の弱りきった省吾を見ていると、止めると決めた決心が鈍りそうになる。
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