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「省吾。お前もう一度矢野のところに行ってこい。」
「なんで……!」
「行ってケジメつけてこい。」
「…………。」
「ちゃんと正直に自分の気持ちを伝えて振られてこい。そしたら俺が慰めてやるから……。」
俺は自分の弱虫はひた隠しにして、省吾に男を見せろと言った。
すると、
「嘘ばっか。……お前もうすぐ居なくなるじゃないか。」
ムッとして省吾は眼鏡の奥の視線を他所に向けた。
「そんなすぐには家を出ていかねぇよ。まだこっちにいるし。帰ってくるし。」
「ハッ!それも嘘だね。
俺が好きになるもんは絶対必ず居なくなるんだ!
母さんも、先生も、晃君も!
夏輝も絶対帰ってこない!」
晃君か……。懐かしいな、おい。
たしか省吾の初恋の君か?たしかあれは小3だったか?
初めてのトキメキを仲良しのクラスメートの男子に感じて、いつも話を聞かされていたんだっけな。
四年の進級の時に残念ながら晃君は転校してしまったんだが──。
と、しばし俺の脳内は過去に記憶が遡った。
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