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「お前さぁ、絶対とか言うなよ。何事も絶対とは言いきれねぇんだぜ?
ましてやお前は俺を故郷に帰さない気か?ああ~ん?」
俺がおどけて言い返したら、省吾はぐっと詰まって。
「……ほんとはもう俺のお守りとか嫌なんじゃないのか?」
唇を噛み涙を堪える姿に胸を抉られる。
こいつどういうつもりでそんなセリフを吐いている?
矢野にもそんな庇護欲を掻き立たせるような態度を見せて気を引いていたのだろうか?
詰め寄りたい気持ちとは裏腹に、このクソガキ…とも思ってしまう複雑な感情が俺の胸の内で蠢いている。
「ごちゃごちゃ煩いよ。ほら、行ってこい。俺はここで待っとくから。
ちゃんと気持ちを伝えてスッキリしねぇと長引くぞ。」
───俺みたいにな。
背中を押してやると省吾は今から行く告白に顔を赤らめて振り返った。
「絶対先に帰るなよ!約束だからな!」
いつも俺との約束はすぐに破るくせに、こいつは現金なやつだなと思う。
やることやっといて意外と内面は純情だったりするから憎めない。
「ヘイヘイ。ほらさっさと済ませてこい。」
そう俺が追い立てて言うと、
「ありがとう、夏輝。……好きだよ。」
と子供の頃の笑顔で笑って返して、省吾は意を決した表情に変えると教室を出ていった。
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