第1章

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──6月某日。省吾から電話があった。 『なぁ、夏休みいつから?』 「20日からだけど、なんで?」 『ん~……。いつ帰ってくんのかなぁ~と思って。』 可愛いこと言ってくれるじゃないの。 高校を卒業して俺は東京の三流大学に進学して、省吾は地元に残り就職の道を選んだ。 俺たちは所謂『遠距離恋愛』というものをやっていた。 「帰省すんのは22日ぐらいになると思うよ。」 部屋のカレンダーを見ながら答えると、『なんで19日に帰ってこないんだよ。』と文句を返される。 「土曜とか帰省客で混みそうじゃん。一日2日、そんなたいして変わんないだろ?」 早く帰ってこいとブー垂れる省吾に何を焦るのかと不思議に思っていたら、 『夏輝はわかってないよなぁ~。』 とぼやかれる。
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