第1章

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『俺、毎日退屈し過ぎて死にそうなんだけど。早く帰ってこいよ。』 「お前の暇潰しのために俺を急かすな。誰か遊んでくれるやつはいねぇのか?」 『誘えば出てくる奴はいるけど……。行ってもいいのか?』 「………………。」 その妙な間から良からぬ想像が安易に思い付いてしまって、俺はそれにアタタタ……と頭を痛めた。 (くそ~コイツは……。ド頭にくんなチクショウ。) 仄めかした言い方で省吾がしでかしそうな痛い行動を思いつけば、すぐに「やっぱ行かなくていい。」と口に出してしまう。 卒業式の日に矢野と完璧に別れたはずの省吾を疑うわけではないが、過去の記憶を遡れば少しだけヒヤッとする。 一時期無節操に寄る者拒まず受け入れていた省吾の暗黒時代を思い出すと、寂しさからフラフラとどこかに行きかねないかなと心配になる。 見た目モデルバリのマスクと優男のような雰囲気に影を見せ、幾多の女子生徒の気を引いていた省吾だが今までどんな女も受け付けなかった。 それはコイツの恋愛の対象が男だからだ。 初めから省吾がノーマルだったなら俺たちの関係もこんな風にはならなかったのかもしれない。 が、それを言っても今更の話で。 それよりも今は離れている幼馴染みの動向が気になってくる。 男のくせにどこから出るのかコイツからは色気のようなものが滲み出ていて、それを餌にたまに良からぬ輩が寄ってくる。 省吾も省吾で誘われたら流れに逆らわず拒まいないから、いちいち構うたびに俺が心配するはめになるんだ。 酷い時には自ら誘ってる時もあるし……。 (なんかムカつくな……。腑に落ちん。) 俺と付き合うようになってこれからはバカなことはしないと省吾は誓った。 だから信じれば心配することは無いのだけれど、万が一を思えば「行ってこい」とは簡単に言えない。
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