第1章

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「なぁ、この目覚ましちょうだい。」 「んあ?」 省吾の手にある時計を見て、俺は昔を懐かしく思い出す。 それは思い出の置き時計で、子供の頃二人で一緒に少年野球を始めた時に省吾の母親が俺たちにお揃いで買ってくれたものだ。 「同じもん持ってるだろ?」 「俺のはとっくに壊れたよ。」 そう言って省吾が時計の針をクリクリと回す。 「ゴラ。設定変えんなって。」 「これ持ってくの?置いていけよ。そんで俺に頂戴。」 奪い返そうとするとイタズラ顔で後ろに隠される。 「新しいのを自分で買えばいいじゃねぇか。」 「イヤだ。面倒くさい。これがいい。」 後ろ手に回したそれを取り返そうと手を伸ばせばさらに遠くに離され、追いかけたら省吾を真上から覆い被さる形になった。
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