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「そんな訳あるかーっ!」
また、からかわれたのだと気付き、メガネを掴んでる手をその胸に押しやった。
「そんな話聞いたこと無い!馬鹿じゃないの?」
真っ赤な顔で鼻息荒く言うわたしと対照的に、
「環さんが知らないだけです」
表情一つ変えずに、メガネを掛け直して車を発進させた。
いつもからかわれてばかりで、面白くないわたしは。
「・・・」
膨れたまま、流れゆく街の景色を眺めていた。
『お前はそう言うところが、可愛くないんだ』
元彼の言葉が頭によぎる。
海外転勤に着いてきて欲しいと言われ、即答出来なかったわたしを置いて。
二股相手の可愛い彼女と、さっさと日本を発った男。
可愛くないなんて、昔から言われ続けていたから。
何とも思ってなかったけれど。
可愛い女なんて、どうやってなれば良いんだろうか。
その術(スベ)を、わたしは知らない。
落ち込みかけたわたしの耳に、クスッと笑う声がした。
「環さんは、可愛いですね」
見る見る間に、頬に熱が籠る。
「環さん?」
顔をそむけたままのわたしの頬を、彼の手の甲がなぞってゆく。
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