1-約束を覚えていますか?

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あたしは彼のことが好きだった。 幼いあたしが抱いていたその感情は、果たして恋と呼べるものだったのか。 それは今となってはわからない。 でもあたしは彼を守りたいと思った。 彼は優しい人だった。 このままでは、いつか彼の心は壊れてしまうだろうと思った。 世界は彼のように優しい人には厳しすぎるものだから。 だから、あたしが彼を守りたいと思ったのだ。 だが、それは叶わなかった。 そう遠くない将来、彼はこの国の頂点に立つ。 その時彼の隣で、彼を支えるのはあたし。 そう、信じて疑わなかった。 この国の政界に迫る危機を感じながらも、あたしは彼の将来を信じて疑わなかった。 あたしが、すべてを失ったのは12の歳のことだった。 ――その日、父は死んだ。 父は皇帝を守ろうとした。 しかしそれは敵わなかった。 父も皇帝もその日死んだ。 新しい皇帝には彼が就いた。 その時彼はまだたったの11歳だった。 彼が皇帝となり、外祖父の名を盾に董(とう)家の当主が政を我が物にした。
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