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あたしは彼のことが好きだった。
幼いあたしが抱いていたその感情は、果たして恋と呼べるものだったのか。
それは今となってはわからない。
でもあたしは彼を守りたいと思った。
彼は優しい人だった。
このままでは、いつか彼の心は壊れてしまうだろうと思った。
世界は彼のように優しい人には厳しすぎるものだから。
だから、あたしが彼を守りたいと思ったのだ。
だが、それは叶わなかった。
そう遠くない将来、彼はこの国の頂点に立つ。
その時彼の隣で、彼を支えるのはあたし。
そう、信じて疑わなかった。
この国の政界に迫る危機を感じながらも、あたしは彼の将来を信じて疑わなかった。
あたしが、すべてを失ったのは12の歳のことだった。
――その日、父は死んだ。
父は皇帝を守ろうとした。
しかしそれは敵わなかった。
父も皇帝もその日死んだ。
新しい皇帝には彼が就いた。
その時彼はまだたったの11歳だった。
彼が皇帝となり、外祖父の名を盾に董(とう)家の当主が政を我が物にした。
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