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しかし彼には、まだ邪魔になるものがあった。
それこそがあたしだった。
あたしが彼の妃となり、彼の子を産んだら――もしそれが男子だったりしたら、再び楊家が力を持つだろう。
父が亡くなり、勢いを失くした楊家を封じ込めるには今しかないと、董家の主は考えたのかもしれない。
あたしは命を狙われた。
その時の襲撃で母は死んだ。
そしてあたしは右足に一生消えることのない傷を負い、弟は左手の自由を失った。
そこを危険と判断したあたし達は、長年仕えてくれていた侍女、明珠に連れられ、命からがら住み慣れた邸を後にした。
それが7年前のこと。
はじめは少しの間姿を隠すだけの予定だった。
しばらくたてば、親族の誰かが迎えに来てくれる、そう信じていた。
けれど、誰もあたし達を迎えには来なかった。
あたし達を邪魔だと思っていたのは、董家の者達だけではなかったのだ。
父の死後、楊家の当主となったのは叔父だった。
腹違いの兄弟だった父と叔父は、昔からそりが合わなかった。
でも、だからと言って、自分達が見捨てられるとは思わなかった。
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