1-約束を覚えていますか?

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しかし彼には、まだ邪魔になるものがあった。 それこそがあたしだった。 あたしが彼の妃となり、彼の子を産んだら――もしそれが男子だったりしたら、再び楊家が力を持つだろう。 父が亡くなり、勢いを失くした楊家を封じ込めるには今しかないと、董家の主は考えたのかもしれない。   あたしは命を狙われた。 その時の襲撃で母は死んだ。 そしてあたしは右足に一生消えることのない傷を負い、弟は左手の自由を失った。 そこを危険と判断したあたし達は、長年仕えてくれていた侍女、明珠に連れられ、命からがら住み慣れた邸を後にした。   それが7年前のこと。   はじめは少しの間姿を隠すだけの予定だった。 しばらくたてば、親族の誰かが迎えに来てくれる、そう信じていた。 けれど、誰もあたし達を迎えには来なかった。 あたし達を邪魔だと思っていたのは、董家の者達だけではなかったのだ。 父の死後、楊家の当主となったのは叔父だった。 腹違いの兄弟だった父と叔父は、昔からそりが合わなかった。 でも、だからと言って、自分達が見捨てられるとは思わなかった。
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