1-約束を覚えていますか?

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現皇帝には今、ふたりの妃がいる。 ひとりは董家当主の孫娘、もうひとりは叔父の娘。 そのふたりの後宮での争いこそが、事実上の政争であった。   本来であれば、そこにいるのはあたしのはずだった。   しかし、今はもうあきらめた。 ここに来たばかりの頃は、いつか彼が迎えに来てくれることを夢見ていた。 はっきりと婚姻の約束をした覚えはない。 でも彼の妃となることが夢だった。 ここへ来て、忙しくて、恋なんてする暇もなかった。 だから、彼との恋があたしにとっては唯一の恋。 美しい思い出として浸ってしまっても仕方あるまい。   彼は今、どんな風になっているのだろう。 ひとつ年下だった彼は、もう今年で18。 立派な大人だ。 どんな顔であたしのことを見つめるのだろう、どんな声であたしの名を呼ぶのだろう…。 いろんなことを考えた。 もう、その顔を見ることさえ敵わないような、遠い人になってしまった彼のことを、毎晩床の中で考えた。   彼の名は神玲玉(しんれいぎょく)。   彼こそがこの仙龍国の皇帝だった――…
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