7人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「んー。今日もいい朝ね!」
あたしは空を眺めながら背伸びをした。
胸いっぱいに新鮮な空気が入ってくる。
一日の中で、あたしはこの時間が一番好き。
どんなにつらくても、お天道様は昇ってくる。
新しい朝は、まるで希望のようだから。
「おはよう、姉さん」
家の中から声が聞こえた。
慌ててが振り返ると、声の主は弟だった。
弟の名は浪嵐(ろうらん)。
あたし達がこの地に来たのは7年前の冬のことだった。
それよりも前のことを、この地の誰も知らない。
「おはよう、浪嵐。
昨日は遅かったのに、もう行くの?」
浪嵐は今年で17になる。
もう立派な大人だ。
しかし、その体つきは年にあわず華奢なもの。
それもまともな食事もできないこの環境のせいだ、とあたしは何度も自分を責めた。
彼の動かない左手も、あたしを苦しめるのに十分だった。
あたしがいなければ、弟がこんな傷を負うこともなかった、とそう思うこともあった。
最初のコメントを投稿しよう!