1-約束を覚えていますか?

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「ささ、薬を飲んで」   明珠を起こすと、彼女の枕元に置いてある薬と水の入った碗を手に取った。 ゆっくりと彼女の口元に持っていく。 短い咳をしながらも薬を飲み終えた彼女をみて、胸が痛んだ。 「ごめんなさいね…、ろくなものも食べさせてあげることが出来ないで」   すると、明珠は力なく、しかし確かに首を横に振った。 彼女の目から涙が零れ落ちる。 「謝罪しなくてはならないのは私の方です。 私のせいで、お嬢様たちにご負担をおかけして…。 もう今なら、お嬢様方だけで生きてゆけるでしょう。 私に、気など遣わなくてもよろしいのですよ…」 「あたしの名は杏華よ。 もう、お嬢様なんかじゃないわ」   思わず強くそう言ってしまった。 明珠が俯く。 あたしは彼女の手を取った。 そうして、なだめるように優しくさすってあげる。 小さな、乾燥したしわだらけの手だった。 「それに、あたし達はもう家族よ。 家族の世話が、負担になんてなるものですか」
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