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「ささ、薬を飲んで」
明珠を起こすと、彼女の枕元に置いてある薬と水の入った碗を手に取った。
ゆっくりと彼女の口元に持っていく。
短い咳をしながらも薬を飲み終えた彼女をみて、胸が痛んだ。
「ごめんなさいね…、ろくなものも食べさせてあげることが出来ないで」
すると、明珠は力なく、しかし確かに首を横に振った。
彼女の目から涙が零れ落ちる。
「謝罪しなくてはならないのは私の方です。
私のせいで、お嬢様たちにご負担をおかけして…。
もう今なら、お嬢様方だけで生きてゆけるでしょう。
私に、気など遣わなくてもよろしいのですよ…」
「あたしの名は杏華よ。
もう、お嬢様なんかじゃないわ」
思わず強くそう言ってしまった。
明珠が俯く。
あたしは彼女の手を取った。
そうして、なだめるように優しくさすってあげる。
小さな、乾燥したしわだらけの手だった。
「それに、あたし達はもう家族よ。
家族の世話が、負担になんてなるものですか」
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