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顔を上げた彼女の目を見据える。
くぼんだ目、しみの浮かんだ肌、白髪の混じったぱさぱさの髪。
昔、彼女は邸で一番美人の侍女だった。
それが、こんなふうになってしまった。
彼女がこうなってしまったのは、あたし達に巻き込まれたせいだ。
彼女があの日、あたし達を見捨てていたなら、きっと今よりもっとひどい生活が待っていた。
下手をすれば死んでいたかもしれない。
あの日、彼女は血の繋がりもないあたし達を救い、そして今まで育ててくれた。
本当であれば、彼女はとっくの昔に結婚し、今頃子供もできて幸せに暮らしていただろう。
当時の彼女のように美しく若い女なら、平民の生まれでも金持ちに見初められ贅沢な暮らしが出来たかもしれない。
だが、彼女は自分の幸せよりも主君への忠誠を選んだ。
「なんと、慈悲深いお言葉でしょう…」
彼女はあたし達兄弟のために昼も夜も働いてくれた。
そのせいで体を壊し、3年前から薬を飲まなければ生きていけない体になってしまった。
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