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あたしの本当の名は楊杏華(ようきょうか)といった。
あたしが生まれた楊(よう)家は、当時国で一番の力を誇る家だった。
もとは商家。
楊姓を名乗り始めた頃は、成り上がり者がと蔑まれたこともあったのだという。
しかしそれは過去の話。
名前も知らない曾祖父の話だ。
あたしが生まれた頃には、高級官僚のほとんどが楊家の者、あるいはなんらかの繋がりのあるものばかりだった。
その楊家の頂点に立っていた者こそ、父だった。
幼くして母親を失った父は、ひとりで勉学に励み、立派な文官になった。
楊家当主だった祖父が亡くなった時、父はまだ20歳と若かったが、その手腕を知る親族の方々は、彼が楊家の当主となることに反対はしなかった。
あたしが物心ついた頃、楊家はその最盛期にあった。
そして父は、それ以上の繁栄を求めていた。
父が欲していたのは、皇家との固い繋がり。
皇家との血の繋がりだった。
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