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その生涯、母ただひとりだけを愛しぬいた父には、子がふたりしかなかった。
あたしと、弟の浪嵐のふたり。
父はあたしが生まれてすぐ、計画を実行に移した。
父はあたしに、幼いうちから様々なことを教え込んだ。
高貴な家の子女にふさわしい言葉遣い、振る舞い、そして自分の身を守るための剣術。
国の歴史、政治から楽器に歌、絵など様々なことを学ばせた。
自由はなかった。
時折、なんのためにこんなふうに生きなければならないのかと自問したこともあった。
しかし、それもひとりの少年と出会ったことにより変わった。
彼はあたしと同じだと思った。
大人達によって操られるだけの、孤独な傀儡。
当時の皇帝には兄弟も従兄弟もいなかった。
子供も彼ひとり。
彼がこの国の次期皇帝になることは、誰もが確信していた。
そんな彼の将来の妃として、あたしは10の歳に彼のもとへと上がった。
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