《第2部・第1章》

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『美和おかえりなさい』 事情を話している事からこの間とは違う、いつものお母さんだった。 ミロを抱いたお父さんも『おかえり』と私の頭をくしゃっと撫でる。そして、2人とも降りてきた松本さんに深々と頭を下げて顔をあげるとお礼を言った。 『たまたま通りかかっただけなんで、普通にしてください(焦)』 お母さんは今朝渡せなかった菓子折りを松本さんに差し出した。 『大家さん…そんな気を使わずに(焦)』 『私達の気持ちですから』『そうですか、すみません』 松本さんは菓子折りを受け取り丁寧なお礼を言い、私に向きなおる。 『あたしのメアド、登録なさい』 いらないとばかりに制すると、松本さんは私の制服のポケットにメアドを書いたメモを入れた。 『あなたって直接言わなそうだし、メールなら書けるでしょ?ちゃんと吉井って書いておいてね。あたしも登録するから』っと言い、お母さんらに会釈をし車に戻っていった。 私は松本さんを追いメモを返そうとポケットからメモを出すが、松本さんは『かたくなねぇ、メアド交換だけでしょ。もっともこんなめんどくさい事をしなくても携帯と携帯を近づけると出来るけど、あなたって、かたくなだしね』 ドアを閉め、じゃっ…とばかりに車をマンションへと走らせる。私はなすすべもなくメモをポケットに入れる。 風呂に入りご飯も済ませ、洗い物をして2階に上がる。 ハンガーにかけた制服にファブリーズをスプレーし、メモを取り出す。 メアドを見て吹き出す私。メアドが【ピンクベイビィ】だなんて…車もピンクでちょっと変!女の人でもピンクベイビィだなんてメアドに付けないって(笑) いたすぎる、あの人… けど同時に安心感がよぎり、そんな私の心情に戸惑いもあった。 【危なっかしいのよ、あなた】 【あなたって言わなそうだし】 何かわかってる感がした。見透かされてる? 【あたしから見たら子供よ】 松本さんの言葉が思い出され…私はなかなか寝付けなかった。
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