《第2部・第1章》

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そう言ってうどん丼を前に付き出し、ニッとわらった菊地さんは引っ越してきた当初と印象が違う。 うどんの成せるパワーなのか? 『僕の叔父がうどん職人なんで、遊びに行くと小さい頃から食べさせてくれて。僕もうどん職人になりたかったけど…家を継がないといけなくて(苦笑)休みにはみんなにうどんを食べてもらいたいんです』 『ありがたいわねぇ』 佐々木さんが息子を見るような眼差しでそう言った。 菊地さんはテヘッと照れ笑いし茹であがりそうなうどんに向き直る。 『お待ちぃっ!』 菊地さんは人数分のうどんを大きなトレーに入れて持ってきた。 《お待ちぃっ!》って言わなそうな感じだけど、なりたかった事への情熱は人をこうまで変えるのかな。もっとも菊地さんとは2回しか会っていないけど。サラサラヘアでメガネ、そして初対面の時にはスーツでおとなしめの印象だったんだ。 『熱いうちにどうぞ、僕も一緒に食べますから』 と佐々木さんの隣に座り美味しそうに食べ始めた。 みんな美味しそうにうどんを食べているが、私は猫舌で程よい加減になるまで待ってから食べ始めた。 【うどん食べていきませんか?】 あの日…誘いを断り帰った私。こんなに美味しいうどん…たしかに私は、かたくなかもしれない… 誘われたら従う事も必要なのかもしれない…と、うどんを食べながら思う私。 『さぁ、まだまだうどんありますからおかわりしてくださいよ~ぉ!』 菊地さんはうどん丼を置き、うどんを見せ、台所でスタンバイしていた。 弾け過ぎる(笑) 私達は昼過ぎまで菊地さんのうどんの会に参加し、かけうどんの他にまだまだうどんの楽しみ方はあるそうでまた来週って事でお開きになった。 『片付けを手伝います』 『大丈夫ですよ、これも楽しみの1つです、うどん職人は片付けも仕事だから』ニッと笑ってみんなを見送ってくれた菊地さん。 良い人だな。 ミロもかつおぶしをもらって、美味しかったのか口を舐めて、名残惜しそうに菊地さんの部屋を見てにゃ~と鳴いた。
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