《第2部・第1章》

16/31

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
ミロを抱いたまま私は、前を歩く藤永さんへ声をかけてみた。 『原稿用紙?何枚いるの?』 『5枚お願いします』 良いわよ、と笑って部屋に入って原稿用紙を持ってきてくれた。 『ありがとうございます』と1枚当たりの金額を計算し5枚分を渡した。 『漫画描くの?』 『漫研に入ってて』 『懐かしいわ~、あたしも漫研だったし。漫画家目指すの?』 『やりたい事ってまだわからなくて、漫画好きだから漫研に』 『そうなんだ、今度あたしの漫画の批評してね。担当の次に読めるんだから、近くに住んでる特権よ』 藤永ゆう…って読んでる漫画雑誌にはなかったような気がするけど、言葉にはしなかった。 ありがたく手にした原稿用紙を持って帰り少しだけ、下書きをした。 もう食べられないってくらいうどんを食べたせいか私はウトウトと眠ってしまった。 うどんの会…行って良かったかもしれない(^-^) 松本さんから『うどんの会楽しかった?あたしは仕事の打ち合わせで今、出かけてるわよ』そうメールがきてたのを読んだのは夕方だった。 『日曜でも仕事?』 『そうよ、入る時があるのよ。読者モデルの撮影は日曜が多いから』 そういえば立ち読みした雑誌にも読者モデルがたくさん載っていた。 『あの、雑誌見ました』 『そう!嬉しいわ。あなたもあの青いリボン付けて学校行ってみなさいよ。似合うから!色ゴムで束ねてないで、さ』 メールの締めくくりは… 『いつかメールの内容じっくり話しましょ』って事だった。 ためらって返さずにいると『このままじゃ何も変わらないわよ』って返ってきて私は携帯をテーブルに置いて丸くなったまま…目を閉じた。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加