《第2部・第1章》

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『すぐ隣だから大丈夫です』 『良いって良いって』 鍵を閉め夜風にブルッと肩をふるわせながら駐車場に出て何歩か歩いた時に、見覚えのあるピンクの車が入ってきた。知らない人なら避けて通るけど、松本さんだから…と、立ち止まった。 藤永さん・松本さんは挨拶をし、私もその後で挨拶をする。藤永さんが私を促し『じゃっ』と松本さんに手を軽くあげた時に、松本さんが藤永さんと私を呼び止めた。 『遊びに行くにしては汚い格好ね、2人とも薄汚れて(笑)』 薄汚れて…たしかに風呂に入りたい、けど松本さんに鼻で笑われて改めてハッとする私…そして藤永さん。『ちょっと送ってくるだけだから、このまま出ちゃってあたしぃ』 『あなたもだけど、美和ちゃんの方が汚いわよ』 恥ずかしさのあまり私は駐車場を飛び出し家に向けて走る。後からついてきた藤永さんが、私のお父さん・お母さんに頭を下げ大量のリンゴを差し出す。 『送ってきたりケーキやリンゴまで…悪い人じゃなさそうだし、今日こんな時間までいた事は大目にみよう』とリンゴを食べながら言うお父さん。 『良いんですか?あの子は学校でも掃除をやらされてるんですよ、言いたいのに美和が黙っててって言うから』 『美和が自分の意思で決めたって言ったんだ。帰ってきたあの顔を見たか?笑っていただろう、隣に行って美和が笑えてるなら様子をみようじゃないか』 風呂もご飯も済ませ部屋に上がった後にこんな会話がされていたとは知るよしもない。 『大丈夫とは言ったもののマジ疲れたぁ~』お気に入りのCDを聴きながら布団の上に大の字になる私。 テーブルに置いた携帯がメール表示を指しているのに気がつき、起き上がり携帯を取りメールを見る。 『この間のメールの件でゆっくり話したいから都合の良い日にちを教えてちょうだい。あたしの仕事のない日に重なると良いけど(笑)』って松本さんから。 『私はいつでも良いです』って返すとすぐに返信がきた。 『返信遅いじゃないっ。待ったわよぉ。面倒ねぇ!電話っ→これがあたしの番号だから登録なさい』 メールの下に携帯番号があり私は渋々登録し『登録しました』と送信すると『あなたの電話番号書いてないわよ』ときた。 仕方なく松本さんの電話番号にかけると…カラカラッンとグラスを置く音がして『これがあなたの番号ね、登録しとくわ』とまたグラスの音がする。
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