《第2部・第1章》

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次の日の夕方…バス停を降りてトボトボ帰っていると車のクラクションがなり、振り向くとピンクだった。窓が開き車のロックを解除する音がしドアを開ける松本さんがいた。 昨夜のメールに返さなかった事に申し訳なさと…油断から『あっ』と声が出ていた。 『長くは停まっていられないから早く』 私は車に乗りシートベルトをした。バックミラーをチラッと見て、クッとハンドルをきり器用に渋滞の車の列に入ってく。ハンドルさばきはあざやかだ。 『メール、電話…何回したと思ってんの?(ため息)』『ごめんなさい』 『昨日帰ったら藤永さんが駐車場の車の中で考えこんでたから、何事かと聞いてみたのよ。そうしたら、あなたの事を心配してたわ』『私…』 『一言も喋らないから心配だって。メールの件も聞いてたからあたしも気になってね』 『すみません』 『仕事の帰りだから通り道よ、大丈夫』 言ってみなさい…と促され私は昨日のマクドの一部始終を涙に声を詰まらせながら話し終えた。 『接客業でそれは問題ありね、接客業は同じように接客しなきゃ』 『だから余計に辛かった』『わかるわよ、あなたの気持ち』 ハンドルを持っていた左手をはなし、松本さんは私の頭を撫でた。 ふーむ…と考えていたかと思うとハンドルを叩いて『これよ!』としたり顔をしうなずいた松本さん。 『明日は土曜日、アシスタントと午前中打ち合わせだけしかないから明日は久々にマクドに行きたくなったわ』 『松本さん、私の話を聞いてました?あの人達が居るならマクドには行きたくないんです』 『だから、何?明日は久々マクドよ』 わかってな~いっ(>_<) 顔をふくらませふてくされた私に、また松本さんは『なるようになるから』と、したり顔で笑った。 家の前…お母さんが出てくると、松本さんも車を降りてメモをさりげなく渡し帰っていった、隣だけど。 お母さんはメモを読んでエプロンのポケットに入れ、私をしばらく眺めていた。 明日マクドに行きたくないっ… 松本さんを嫌いだという感情がなくなりはじめていたのに、私の中で《嫌いという感情》が渦巻いた… 私はなかなか寝つけなかった。
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