第1章

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私の部屋をノックして、彼が挨拶まわりをしていたのは10年前になるだろうか? 坊ちゃん刈りの頭を下げて挨拶する隣人。 思わず、吹いてしまったのは悪かったけど、彼は頭を掻いて、寂しそうに笑ったものだ。 「やっぱり可笑しいですよねぇ! コレじゃあ坊ちゃん刈りのなり損ないですもんねー!」 寂しそうに笑う彼に尋ねた、何故そんな風に笑うのかと。 新しく隣人になった彼は、空を見上げながらそっと漏らした。 「散髪屋のお婆ちゃんのお通夜に行って来たので。 こんな頭でごめんなさい」 私が反応出来ない内に立ち直った隣人の冬樹氏は言いました。「明日には普通になっていますから!」なんて、言い訳してましたね。
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