第1話

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またもこの人は突飛なことを。どうして突然。 「今募集してるんだよ。でもなかなか集まらなくてさ」 「そんな貼り紙ありませんでしたけど」 「あー、」 人が集まるならば俺を誘う必要はないではないかと問うが、煮え切らない表情をする彼は。 「うん、まぁ、いっか」 なんだろうか。 軽い口調で、しかし何処か諦めたようなその顔。 「君に一目惚れした」 「……は、」 「俺、バイなんだよね」 「……」 「まぁそういう反応になるのは分かってたよ」 「……」 「慣れてるから今更傷付いたりしないけど」 そう言いながら歪みそうになる顔を必死に取り繕おうとする笑顔がうまく作れていないのがわかっていないのだろうか。 先程まで気にならなかったコーヒーを挽く音が空間を支配する。 「うん、やっぱり無かったことに「メリットは」 少し寂しそうに呟かれた声を遮って問うた。 「…え」 「何回も言わせないで下さいメリットは」 「え、気持ち悪くないの?」 「気持ち悪いと思ってほしいんですか」 「いや、えと、……うん、よかった」 ありがとう、と嬉しそうに言った彼に思ったことは、勿体無いなぁ、だった。
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