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無遠慮にまじまじとこちらへ視線を投げ掛ける男を睨み上げる。
それを見ていた雄士が宥めてくるが、この男が謝るまで、いや、雄士に免じて申し訳なさそうな顔でも許してやってもいい。
「はじめまして。俺は門井(かどい)。雄士から話は聞いてたんだけどずっと会ってみたかったんだ。よろしくな」
そんな俺の譲歩(心の中でだが)を踏みにじるように、何事もなかったように笑顔で聞いてもいない自己紹介をしてきた。
とはいえ自分へ向けられた事柄を受け流すことは俺にはなかなか難しく、頭に入れてしまうのだ。
門井、名は不明。
ブラックリスト追加完了。
「……松城(まつしろ)です。よろしくお願いします」
二度目の来店なんてないけどな。
事務的に挨拶をして、ふと振り返って店内を見回す。
趣のある木製のテーブルと椅子がいくつか置かれ、天井では三枚羽の換気扇が回っていた。
冬が近付く今日この頃、窓からは夕陽が消えかけていた。
その光景が物悲しく、
そしてとても落ち着いた。
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