第1話

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バッと目をひんむいて雄士を見ると前から思いもよらぬ反応が返ってきた。 「ふーん、まぁ判んなくもねぇな。コーヒーは飲めるけど俺も苦いのはあんまりだし」 その声に門井を見上げると、笑うでもなく企む様子もなくて、ぽかんとしてしまった。 小さい頃から好きな、ココア。 幼少時は違和を抱かれることは無かったが、飲み物の好みは高校生になっても変わらず、好きであるということを言う度に苦笑や好奇の目を向けられこそすれ、純粋な興味や笑顔を向けられることはなかった。 十中八九、この顔と性格のせいだろう。 この、性格とそれに比例した、表情の乏しい顔を相手にするスキモノは出会ったことがないし、恐らくこれからも会うことはないだろうと思っていた。 相手がどんな人かを最初に判断するのは殆どが外見だという。身嗜みや表情でその人の“ひと”を決めつけてしまう。人を見た目で判断しないことは難しいのだ。 自分でも理解している。 表情が乏しいということに。 加えて面倒臭い、一般的に友達になりたいとは思わない性格だと自覚している。
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