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「誰か雨佐木(うさぎ)さんの連絡先を知っている人は、いないか」
雨佐木。そう、雨佐木さんだ。僕の左斜め後ろ、入学式の日から誰も座った事のない空席の持ち主。まぁ休み時間とかに誰かが座ったことはあるかもしれないけどとにかく、昨日、ちょっと大神さんが気にかけていた登校拒否のクラスメイトの苗字は、雨佐木といった。
「ん? 雨佐木……?」
そして、随分と見覚えのある苗字だったものだから思わず声に出してしまった。
どこで見たのかなぁ、と思考を続ける前に、隣の席の女子が幽霊でも目にしたように歪んだ表情で僕の方を見ているのに気付く。え、何、僕の顔ってそんなに美形だったかなぁとか我ながらわけのわからない思考で羞恥(しゅうち)心を薄めてみる。無理があった。胃が痛い。
何だ日辻、知っているのか。いえ、あの、全く存じません。公衆の面前で担任とそんな公開羞恥プレイに興じてから、朝のホームルームを終える。
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