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がやがやと賑やかになり始める教室の空気の中から、『死体運びの裏番が、雨佐木さんを……』とか何とか囁かれる声を僕の鼓膜が拾った。どうやら悪名が祟って、さっそく殺人か何かの容疑者に祭り上げられてしまったようだ。
でも、まあ、いいや、何でも。ご家庭だか個人の問題だか知らないが、一般人が抱える問題に御影人が首を突っ込んでも大概ろくなことにならないから。
「おい、日辻」
と、僕の思考をよそに大神さんが僕の席まで出歩いて来て、声をかけた。昼休み以外でこうして話しかけて来るなんて珍しい事だった。まだクラスの席は名前の順のままだから、大神さんと僕の席は結構離れているのだ。
「雨佐木っつーのは、あの家の名前だよな?」
「あ……、そうか」
そうだ、あの家だ。どうやら大神さんも気付いていたらしい。僕が殺して、僕と大神さんで生き返らせた、あの子犬が住んでいる赤い瓦屋根の家。
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