温故知新の巻

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現在の時刻は、朝の7時。 「あと、総司あなたは本当に沖田総司なの?」 総司は腰にあった刀を抜いて、空中でさばいて見せた。 「何度も言ってるではないか。ほらこの通り。私は新撰組でも自他認める程の最強だ」 私はその刀さばきに呆気にとられた。 「すっ、すごい!」 すると総司は曇った表情を見せた。 「もし江戸に帰って病気の自分に戻ったら、こんな事は出来ない。あと、其方は本当に杏奈なのか?」 そっか…確か持病があるんだよね。 と言うか 「持病がいつ発病するかもわかんないもんね。ていうか、杏奈だけど?逆にこっちが疑問だよ。あなたが本当に沖田総司なのか」 すると、総司は私の頬に触れた。 「持病か…そうだな。あと、あまりにも其方が秩(ちつ)に似てるもんで…」 バラバラと崩れ落ちそうな表情の総司。 「秩…?」 誰だ? そんな名前は参考書に載ってなかったような。 「あぁ、石田秩(いしだちつ)だ。今でも心から愛している。体調が悪化してからしばらく会えていないし、近藤に秩と会うことを反対されてしまった…」 総司の顔を見ると、胸が痛くなる。 話を逸らそうと他の話題を振る私。 「ねぇ、江戸の世界と今私達が居る平成の世界って共存しているのかな…?」 総司は頬から手を離した。 「なぜそんな事を言うんだ?」 「だとしたら、皆総司の事を探していると思う」 もし共存していても、一年後にはどっちの世界にも総司は居ない。 「共存していたら、江戸の世界は宇宙にあるのかな?」 笑ながら、冗談を言う総司。
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