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先輩、そこはくすっと笑ってくれないと困ります。
私、この状況の打開策がこれ以上見つからない。
先輩が一歩、私に近づいた。
「…?」
彼の指先が私の頬に触れ、クイっと上を向かされて、
「…っ」
私のファーストキスは一瞬のうちに終わった。
稲妻がぴかっと光ったくらいの短さで、唇を重ねたというよりは、ついばむように掠(カス)め取られた。
私は何が起こったのかと、しばし、茫然とその場に立ちつくしていると、
「涙、止まったな」
先輩は何事もなかったかのように歩き始めた。
私もまた慌てて肩を並べる。
先輩の行動が急すぎてついていけない。
「あのさ、」
私の方を見ずに先輩がぼつりと話しだした。
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