◇待ち人◆

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先輩、そこはくすっと笑ってくれないと困ります。  私、この状況の打開策がこれ以上見つからない。 先輩が一歩、私に近づいた。 「…?」 彼の指先が私の頬に触れ、クイっと上を向かされて、 「…っ」 私のファーストキスは一瞬のうちに終わった。 稲妻がぴかっと光ったくらいの短さで、唇を重ねたというよりは、ついばむように掠(カス)め取られた。 私は何が起こったのかと、しばし、茫然とその場に立ちつくしていると、 「涙、止まったな」 先輩は何事もなかったかのように歩き始めた。 私もまた慌てて肩を並べる。 先輩の行動が急すぎてついていけない。 「あのさ、」 私の方を見ずに先輩がぼつりと話しだした。
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