◇待ち人◆

20/27
前へ
/27ページ
次へ
「あの、ここでいいです。その角を曲がってすぐですから。ここから登り道になりますし」 先輩が足を止めて私の方へ向き直った。 「じゃ、金曜に」 「はい」 「また、メールするよ。…おやすみ」 先輩は抑揚のない話し方で私に別れを告げ、 「はい、送っていただいてありがとうございました。おやすみなさい」 役目は果たしたとばかりに来た道をすたすたと歩いて行く。 「……」 先輩の背中を見て、とてつもなくわびしさがこみ上げてきた。  私は先輩の言葉の一つ一つに一喜一憂している。  だけど、先輩はそんなことはなくて。 まるで、私だけまだ片思いをしているみたいだ。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加