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(はぁ……疲れた。少し早足で歩いただけなのに)
自分の体力の薄さを思い知らされ、悔しいやら情けないやら……。
青蘭方面は平坦な道だけど、創立から100年以上の歴史を誇る因幡西高へ続く道は“山道”と置き換えができるくらいに険しい道のりだ。
でも、津波などの災害に備える為にこの上り坂の先に高校を構えたのだろうと推測すると、息をきらしながらも先人達の知恵に感銘を覚え、ふっと笑みを出した。
勾配な坂を抜けるとやっと正門が見えて、同時に桜木先輩の姿を捕えた。
「桜木… …先輩……」
門柱に背中をもたせて立っていた先輩は、私の声に気づくと小さく微笑んだ。
「この坂を走って来なくてもいいのに。学校が終わってから来たわりには身軽だね? カバンは?」
「駅のロッカーです」
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