◆黄昏の誘惑◇

13/18
60人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
帰り道、先輩が積極的に私を笑わせるように努めてくれて、会話がはずんだ。 二人とも自然に笑みがこぼれ出てとても良い雰囲気になり、いつの間にか先に起こった出来事はすっかり脳裏から消えていた。 「次の日曜日、バイト休みなんだ。予定空いてる? どっか行きたいとこある?」 駅での別れ際、先輩はまた私の心をくらっとさせることを言った。 「本当ですか!?」 どうしよう、初デートだ。嬉しい。 もう……私って、本当にどうしようもなく単純……。 行きたい所はどこでもいいのだけど。でも、確かこういう時ってその答えが一番困るって聞いたことがあるし…… 「え…と、じゃあ、東森動物園」 「動物園!?」 先輩の口が横に飛び出たのを見て、こちらが驚いた。  ちょうど通りすがった女学生も素っ頓狂な声を耳にし、こちらへ振り返っている。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!