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報復をすれば、今回のように関係のない周囲の者まで巻き込み、そしてまた新たな悲しみを生む。
俺はそんなことは望んでいない。
本物の倉田唯には、いつか自然に制裁が下される時が来るだろう。
俺がわざわざ手を下して自分の手を罪に染めなくとも、愚かな行いをした事を悔いる日が来ると思う。
「…………」
つい昨日まで報復に燃えていた俺がこんな解決策に辿り着くとは。
虫がいい? 確かにそうかもしれない。
だけど、俺の復讐心はとっくに萎えている。
舞に出会い、彼女を好きになってしまったから。
幸い彼女は何の疑いも持っていない。
だから、これまでの事は彼女に言う必要はない。このことは俺の胸の内に収めておこう。
自分がずるい男だというのは重々わかっている。
だけど、このことを知った舞が俺を軽蔑し、俺の前から去っていくなんて耐えられない。
せっかく掴んだ幸せを手放すのが怖い。
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