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先輩は繋いでいた手を離し、
「ドライヤーを拝借するだけだ。服を乾かしたい」
私に向かって淡々と理由を告げた。
確かに最もな意見だ。
でも、健康な男と女がラブホテルに入るわけだし、例え“何もしないから”と言われても普通は警戒する。
「行くぞ」
先輩が前に向きなおり、エントランスから2、3歩足を踏み入れた所で
「で、も…」
彼の歩みは再び停滞し、もう一度振り返って吐息を吐いた。
「言っとくけど…」
物わかりが悪い者に対し、噛み砕いて説明しなければいけない事にうんざり、と言わんばかりの表情だ。
「別にやましい考えとかないから。レポート、乾かさないとまずいんだろ?」
平坦な口調で言われ、厭らしい考えをしてしまった自分の頬がかっと熱くなる。
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